Vol.1 ただ歩くだけでは不十分?
高齢者はウォーキングで筋力を維持できるのか?
元気な高齢者の方に「足腰を鍛えていますか?」と尋ねると、多くの方は「いつもウォーキングをしています」と答えます。果たして、ウォーキングは足腰の強化に効果があるのでしょうか?今回は“高齢者の筋力維持・アップ”の視点から、 『ウォーキングは効率的な運動なのか』 を考えてみたいと思います。
●無理なく取り組める
●身体への負担が少ない
●長時間行っても疲れにくい
●特別な道具を必要としない ・・・等
しかし、特に意識せず、ただ歩くだけではごく一部の筋肉しか動いていないのも事実です。
若者は歩く際、太ももの筋肉を使い、足を大きく開いて歩きます。とくに大腿四頭筋は太もも前面にある大きな筋肉で、『歩く』 『走る』 はもちろん 『立ち上がる』 等、さまざまな動作時に使う重要な筋肉です。私たちは日頃、特に意識せず、この大腿四頭筋を使い動作しています。
しかし、人は老いるとともに、歩幅の広い歩行が困難になります。道行く方の歩行の様子を思い浮かべてみてください。高齢の方が狭い歩幅で、膝をあまり曲げずに歩いている姿をよく見かけるはずです。多くの高齢者は加齢とともに “大腿四頭筋を使う歩幅の広い歩行” ができなくなり、関節で身体を支えながら歩く “小股歩行” や “すり足歩行” へ変化していきます。高齢の方が、比較的長い時間ウォーキングに取り組めるのは、それだけ身体に負担がかかっていない歩き方をしているから、ともいえます。
そのため先の 「ウォーキングは足腰の強化に効果があるのか?」 に対する私の返答は、 「ウォーキングはよい運動とはいえるが、筋力をつけることは難しい」 という結論になります。筋肉をさほど使わず、散歩の延長線上の感覚でウォーキングを長期間続けていても、歩行の改善や足腰を鍛えるほどの筋力アップは望めないのです。
■レッグプレス |
手軽に行うなら、身体ひとつで取り組めるスクワットがおすすめです。心身ともに健康でもう少し本格的に取り組みたい、という方はリハビリマシンの活用をおすすめします。例えば、わが社のタートルジムシリーズの中では 『レッグプレス』がおすすめです。
レッグプレスを使って全力に近い筋力負荷を設定し、筋肉が疲れるまでやるのが良いでしょう。ただし、オーバーワークには注意です。個人の身体状況をふまえ、頻度と容量には十分注意してください。
最後に、ウォーキングは筋トレには向かないと言いましたが、ウォーキングを行う利点は他にたくさんあります。日光にあたり外の空気を吸うことはリラックス効果につながるのはもちろん、生活のリズムを整えるうえでも有効です。また、外を歩けば人と接する機会も増え、生活にハリや変化が生まれるはず。家に閉じこもっているより身体や心に良いことは明らかです。筋力維持・アップは筋トレで実現するとして、別の視点で日々のウォーキングを楽しんでいただくことをおすすめします。
記事執筆:江崎 健太郎
代替医療・予防医療機器の販売メーカー、江崎器械株式会社 代表取締役 2019年より、WCEM(WORLD CONFERENCE ON EXERCISE MEDICINE:世界運動療法学会)外部委員を務める。EXERCISE & AGEING分野のスピーカーとして講演を行なう。
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